大脳基底核と運動学習、ジストニアについて
今後のリハビリ計画を立てる上で、運動学習についてより深く知る事が必要不可欠と考えて色々と調べていたところ、自分が直面している問題の核心を突いた論文を発見した。
臨床神経, 49:325−334, 2009|臨床神経学|日本神経学会
日本神経学会機関誌に掲載された高草木教授の論文である。
ジストニアの発症には大脳基底核の異常活動が関わっているという説は多くの関連サイトに書かれているが、基底核による運動制御についてここまで深く解説された文献は見た事がなかった。
局所性ジストニアはミュージシャンやある種のスポーツ選手など、繊細で高度な動作を必要とする人に起こりやすい病気。
障害がない人にとっても興味深い内容だと思うので、時間があれば読んでみてはいかがでしょうか。
内容を少しだけ紹介。
(画像:臨床神経,49 325-334,2009,高草木薫,大脳基底核による運動の制御,Fig.8)
基底核による運動の制御に少なくとも次の3つのプロセスがある。
- 運動プログラムの生成
- 姿勢制御
- 随意運動の実行。
詳しくは本文を参照。
図を見て分かるように大脳基底核は運動の制御において中心的な役割を担っているが、ここに疾患があると様々な運動障害が起きてしまう。
(画像:臨床神経,49 325-334,2009,高草木薫,大脳基底核による運動の制御,Fig.9)
上の図は基底核疾患における運動障害のメカニズムの作業仮説を図解したものである。
詳しくは本文を参照。
ジストニアになると筋緊張の亢進や異常収縮、異常姿勢,不随意運動が起きるが、自分のような局所性ジストニアは運動学習や学習の強化との関連が強いらしい。
最初の図を見て分かるように、運動プログラムの生成には大脳皮質-基底核ループだけでなく小脳も重要な役割を担っている。
”ジストニアの病態を修飾する因子として小脳の機能異常を考慮する必要がある”、とこの論文には書かれていたが、小脳の異常活動もジストニア発症に関わっているという説は、2013年に理研もジストニアの新たな発症メカニズムの知見として発表している。
また、上記の図にはいずれも基底核の中にGABAの文字があるが、GABAとは抑制性の神経伝達物質で、どうやら自分はこの機能が著しく低下しているらしい。
現在服用しているリボトリールという薬はこのGABA受容体の働きを強める薬で、これが完全に切れるとジストニアの症状が重くなるだけではなく、睡眠中の不随意運動や極度なむずむず足症候群が起こり、日常生活にかなり支障をきたす事になる。
臨床現場では今後も原因不明のままだろうが、自分の場合、GABAの機能低下とペダリングという意外に繊細で高度な運動学習がジストニア発症の原因と考えてほぼ間違いないだろう。
この論文を読んでそう確信した。
以上を踏まえて今後のリハビリの注意点を挙げると。
- 薬を飲んでGABAの働きを正常にした状態で運動を行う。
- 極力症状を出さない。
つまり、不要に生成されてしまった運動プログラムを使わない事が大前提で、その上で正常な運動プログラムを新たに生成しなければならない。
かなり困難なで時間がかかる作業だと思うが、可能だと思っている。
前向きかつ気楽に行こう。