アレクサンダーテクニークという方法論
局所性(フォーカル)ジストニアの治療法について調べていたら、アレクサンダーテクニークという耳慣れない方法をみつけた。
アレクサンダー・テクニーク(Alexander Technique)とは、心身(すなわち自己)の不必要な自動的な反応に気づき、それをやめていくことを学習する方法。
出典:Wikipedia
「心身の不必要な自動的な反応」とはまさにジストニアにおける不随意運動ではないか。
これは自分にも有効かもしれない。
この方法論を提唱したフレデリック・マサイアス・アレクサンダーという人は若くして俳優としてのキャリアをスタートしたが、ある時期から舞台上で声が出なくなる不調に襲われたらしい。
そんな彼は、声が出なくなる原因は声帯を圧迫する無意識の筋緊張であることを自力でつきとめ、この方法論を確立したそうだ。
筋緊張により声が出なくなるという症状は、局所性ジストニアの一種である痙攣性発声障害にも似ている。
これを試さない手はないと思い、良さそうな入門書を探して早速ダウンロード。
期待を裏切らない納得の内容で、理解しやすく一気に読んでしまった。
なぜ筋緊張が起こるのか、それがどれほど動作の妨げになるか、いかにしてそれを取り除くかについて分かりやすく解説している。
自分の病状(ペダリンング時に発現する右足のジストニア)にも深い関連があることは間違いない。
ジストニア改善のためだけではなく、ジストニアという悲劇的な病気にならないためにも読む価値のある本だと思う。
また、本書が理想的な体の使い方とは何かを改めて考えるきっかけになれば良いなとも思う。
書きたいことは山ほどあるが、今回は本書の中に出てくる重要なキーワードを3つだけ紹介する。
- 体の支え過ぎパターン
- リーディングエッジ
- 客観的な基準のない感覚に頼らない
「体の支えすぎパターン」とは、過剰に筋肉を収縮させて体を安定させようとする状態の事。
「リーディングエッジ」とは目的の動作の先端のことで、リーディングエッジ意識して動かすことで動作に必要な筋肉や関節の動きを適度にし、筋緊張を最小限にすることが出来る。
例えば、エレベータの行き先ボタンを押す場合なら指先、ペダリングであれば足裏がリーディングエッジになる。
「客観的な基準のない感覚」とは、真っ直ぐとか平行とか、漠然とした自己の基準によって評価している感覚のこと。
逆に客観的な基準のある感覚とは、太ももの前側に体重が乗っているなど、はっきりと実感できる感覚のこと。
客観的な基準のない感覚に頼り過ぎると、いつしか「なんとなくしっくりこない」という状態に陥り、そこからなかなか抜け出せなくなる場合がある。
ジストニアを発症してから1年間、症状を改善するために色々なことを試してきたが、その中で強く感じたのは、最近主流のトレーニングは筋緊張を高める方向に導いてしまう危険性があるのではないかということ。
体幹の強化や、筋肉や関節の使い方にフォーカスすることには意義があると思うが、意識しすぎることは筋緊張の増加につながりかねない。
あくまでも個人的な意見なので、上手く行っている人は気にせずどんどんトレーニングしていただきたいが…
残念ながら、最近主流のアプローチは自分にとって良くない結果をもたらした。
昨年の7月に、下腹部を固めて(腹圧を高めて)骨盤を安定させる方法、股関節主導のペダリングを教わり、常にそれらを意識して練習するようになった。
そしてその4ヶ月後にジストニアを発症した。。
主要因は大脳基底核の異常や神経伝達物質の分泌異常であるのは間違いないが、その状況下で(自分にとっては)誤った方法で練習してしまったことがジストニア発症につながったのだと思う。
アレクサンダーテクニークを実践していく過程で、また色々と気づきがあるだろう。
今日のところは以上。
2017年リハビリ初め
8時に起床して餅3個を焼いて食べる。
食後にリボトリール1錠を飲んでからメールをチェックしたりFBを閲覧したり、だらだらと過ごす。
1時間後に2錠目のリボトリールを飲んでからストレッチを開始。
時間差で服用するのはローラー中にリボトリールの効果が低下するのを防ぐのが目的。
リボトリールは最高血中濃度到達時間が2時間、半減期が27時間の長時間型抗不安薬です。効果の持続時間は8~24時間ほどです。
ストレッチは筋緊張の高い下腿三頭筋と大腿四頭筋を中心に行い、右脚がスムーズに上がるように大臀筋も伸ばしておく。
筋紡錘の感度を弱めて伸長反射を起きにくくする効果を期待して、ストレッチは時間をかけてゆっくり伸ばすいわゆる静的ストレッチで行う。
更に置き鍼1.5mmをヒラメ筋下部と上部、大腿直筋の真ん中辺りに貼って準備完了。
右のサドルレールにお守り付けて神頼み。
左足はGIRO EMPIRE SLX、右足はランニングシューズ。
1錠目のリボトリール服用から2時間後に今年一発目のローラーをスタート。
Zwift - Watopia
50:00 172W 63rpm.
20min 204W.
比較的症状が軽かった昨年の4月以来の数値が出た。
当時は自分がジストニアを発症していたとはまだ知らなかったので、不随意運動が出現しようがしまいが構わず力任せにペダルを回していたが、今は違う。
症状を悪化させないよう(ジストニアの回路を鍛えないよう)、とにかく脱力を意識して無理のない回転数で回す。
筋緊張の高まりを感じたら、たまに負荷を軽くして両足とも完全に力を抜くのもポイント。
右肩上がりにはいかないだろうが、こんな感じで続けていけば春には緩めの峠になら登れるようになるかもしれないな。
とにかく幸先の良いスタートが切れて良かった!
Zwiftで走り納め
今年最後のライドはZwiftで。
条件は
リハビリ走と言えども1年の締めくくり。
気持ち良く終わりたかったので気合いれてGO!
Zwift - London, UK
35:04 AVG. 61rpm 178w.
Box Hill KOM 8:28 226w
右足の筋緊張の抑えもきいてたし、強度的にもほぼ今シーズンベストの内容。
冬になってから実走は体が冷えてイマイチだが、ローラーは順調だ。
とにかく気持ち良く今年を終わる事ができて良かった。
来年からまた頑張ろう!
チーム忘年会〜新兵器投入
昨日はチーム(なるツル)の忘年会。
結局この1年間は何度か顔を出しただけでまともに練習に参加することは全く出来なかったけど、飲み会となれば自然と自転車談義に話が咲く。
乗れてない状況とか忘れて純粋に楽しかったな。
やっぱりこの仲間は最高だ。
来年は短時間でいいから出来る範囲で参加できるようになれば良いな。
まずはそこを目標にリハビリ頑張ろう。
で、飲み会の場でK島さんから耳寄りな情報を聞いた。
昨年、K島さんは落車で頚椎を損傷するという大変な怪我を負ったが、驚くべき回復力で練習どころかレースにも復帰して以前を上回るほどの活躍をしている。
自分と同じように不随意運動や筋緊張で苦しんでいるそうなのだが、あるアイテムによって症状を大幅に改善できたそうだ。
そのアイテムとは置き鍼。
置き鍼とは直径1cmくらいの丸いパッチに1mm前後のごく短い鍼が付いているもの。
それを不随意運動や筋緊張を起こす箇所に貼ることにより、筋収縮を抑制する効果があるそうだ。
これを試さない手はないということで、早速薬局で買ってきた。
これを腓腹筋と大腿直筋の下の方、縫工筋の真ん中辺りに貼り、リボトリールの効き目が最大になる時間を狙ってローラーを回してみた。
始めてみると、確かにいつもより脱力しやすい。
数分すると現れる大腿四頭筋の突っ張り感もいつもほど感じない。
これは良いかも。
Zwift - London 34:33 NP 151w
BOX HILL 8:56 210w
BOX HILLのタイムは前回より2秒短縮で出力は3Wアップ。
僅かだが、効果が数値にも表れた。
貼る位置にはまだまだ工夫の余地あり。
鍼の長さを長くすることもできるし、やりようによってはもっと高い効果を得ることも出来そうだ。
今日試した感じでは、下腿三頭筋に関しては腓腹筋よりもヒラメ筋に問題がありそう。
大腿直筋に関しては、膝近くよりも太ももの真ん中あたりを刺激した方が良さそう。
その辺りを考慮して、明日また試してみるつもり。
大脳基底核と運動学習、ジストニアについて
今後のリハビリ計画を立てる上で、運動学習についてより深く知る事が必要不可欠と考えて色々と調べていたところ、自分が直面している問題の核心を突いた論文を発見した。
臨床神経, 49:325−334, 2009|臨床神経学|日本神経学会
日本神経学会機関誌に掲載された高草木教授の論文である。
ジストニアの発症には大脳基底核の異常活動が関わっているという説は多くの関連サイトに書かれているが、基底核による運動制御についてここまで深く解説された文献は見た事がなかった。
局所性ジストニアはミュージシャンやある種のスポーツ選手など、繊細で高度な動作を必要とする人に起こりやすい病気。
障害がない人にとっても興味深い内容だと思うので、時間があれば読んでみてはいかがでしょうか。
内容を少しだけ紹介。
(画像:臨床神経,49 325-334,2009,高草木薫,大脳基底核による運動の制御,Fig.8)
基底核による運動の制御に少なくとも次の3つのプロセスがある。
- 運動プログラムの生成
- 姿勢制御
- 随意運動の実行。
詳しくは本文を参照。
図を見て分かるように大脳基底核は運動の制御において中心的な役割を担っているが、ここに疾患があると様々な運動障害が起きてしまう。
(画像:臨床神経,49 325-334,2009,高草木薫,大脳基底核による運動の制御,Fig.9)
上の図は基底核疾患における運動障害のメカニズムの作業仮説を図解したものである。
詳しくは本文を参照。
ジストニアになると筋緊張の亢進や異常収縮、異常姿勢,不随意運動が起きるが、自分のような局所性ジストニアは運動学習や学習の強化との関連が強いらしい。
最初の図を見て分かるように、運動プログラムの生成には大脳皮質-基底核ループだけでなく小脳も重要な役割を担っている。
”ジストニアの病態を修飾する因子として小脳の機能異常を考慮する必要がある”、とこの論文には書かれていたが、小脳の異常活動もジストニア発症に関わっているという説は、2013年に理研もジストニアの新たな発症メカニズムの知見として発表している。
また、上記の図にはいずれも基底核の中にGABAの文字があるが、GABAとは抑制性の神経伝達物質で、どうやら自分はこの機能が著しく低下しているらしい。
現在服用しているリボトリールという薬はこのGABA受容体の働きを強める薬で、これが完全に切れるとジストニアの症状が重くなるだけではなく、睡眠中の不随意運動や極度なむずむず足症候群が起こり、日常生活にかなり支障をきたす事になる。
臨床現場では今後も原因不明のままだろうが、自分の場合、GABAの機能低下とペダリングという意外に繊細で高度な運動学習がジストニア発症の原因と考えてほぼ間違いないだろう。
この論文を読んでそう確信した。
以上を踏まえて今後のリハビリの注意点を挙げると。
- 薬を飲んでGABAの働きを正常にした状態で運動を行う。
- 極力症状を出さない。
つまり、不要に生成されてしまった運動プログラムを使わない事が大前提で、その上で正常な運動プログラムを新たに生成しなければならない。
かなり困難なで時間がかかる作業だと思うが、可能だと思っている。
前向きかつ気楽に行こう。
色々と試行錯誤中
局所性ジストニアの治療法は今のところ確立されていない。
定位脳手術という完治が期待できる手段もあるが、リスクも伴うだろうし、薬物療法によって日常生活に支障をきたす症状はほぼ抑えらえているので、現時点では選択肢には入れていない。
機能神経外科 ジストニア(書痙など) | 東京女子医科大学脳神経外科
よってリハビリがジストニアを克服するための唯一の手段になるのだが、ジストニア症状によりペダリング動作が阻害されるという話はほとんど聞いた事がない。
かなりレアなケースだろうし、具体的なリハビリ方法などそもそもあるはずがない。
ピアニストやギタリストの成功例を参考にしながら、自分に合った方法を自分で見つけていくしかないのだ。
と言う事で、効果がありそうな事は全部試してみる。
まずは機材。
クランクが水平位置に近づく時の角加速度と右ペダルの上昇速度が一定以上になるとヒラメ筋の異常収縮が起こることは分かっている。
角加速度とペダルの上昇速度、この二つを軽減できる機材といえば非真円チェーンリングだ。
そこでRIDEAを導入してみた。
非真円チェーンリングにも色々あるが、最大直径の範囲が広い事と直径変化率が緩やかな事がRIDEAを選んだ理由。
結果は期待通りで、ヒラメ筋の緊張をある程度抑える事ができた。
ポイントは真円と同じような感覚で踏むこと。
ギア比が変化しても一定のトルクで踏まないと意味がない。
次にペダリング。
ジストニア症状を出現させない事がリハビリの大前提。
ではあるが、精密な動作の反復がジストニアの発症原因の一つと言われているので、一定のパターンを繰り返す事にはリスクがあると考えている。
実際、症状が出ないケイデンスと強度で回していても、ある程度時間が経過すると右の大腿四頭筋の強張ってくるのだ。
たとえ超ケイデンスであっても、一定のリズムを長時間繰り返すことはリハビリのつもりがジストニアの回路を鍛えているという事になりかねないのではないだろうか。
そこで、ランダムに回転数や踏み込むタイミングを変えたり、上死点や下死点で回転を一時的に止めたり、不規則にどちらかの脚を脱力してみたり、リズムに変化をつけて回す事を最近試している。
まだ試し始めて2週間くらいだが、これはかなり効果がありそうだ。
それともう一つ、SFR。
ペダリングの感覚を鍛えるためでもあるが、筋力を落とさない事が主な目的。
筋力のキャパシティを大きくしていかないと、リハビリの効果もあるレベルで頭打ちになりそうな気がするから。
ケイデンス40〜45、出力は200〜250wで3分以下。
この程度でも息が上がるほど弱ってしまった…
以上がここ最近試していること。
今はフォームとか筋肉の使い方は二の次で、試行錯誤しながら良い運動感覚を身につけることが大事だと思っている。
子供が自転車の乗り方を覚える時にフォームや左右差など気にしないのと同じで。
この土日は久しぶりにZwiftでちょっと強度を上げて見たが、良い感じで楽しめた。